最強の越中をつくる

 越中ふんどしのいいところは、デザインが簡単なことだろう。
 基本的に、一枚の布と、一本のヒモだ。
 多少裁縫の心得のある人なら誰でもできるはず。
 実際、昔はみな家庭婦人が手作りしていたものらしい。
 気に入った素材が手に入ったら、母親とか奥さん、彼女に頼み込んで作ってもらうといい。(もちろん自分で作ってもいい)

 私は商売柄、かなり面白い布素材に囲まれている。
 その中には、「これで作ってみたい」という布がいくつもある。
 そうした布を使って試作し、使ってみる。
 そして「最強の越中」を探らんとするのである。


その2 綿カディーの越中 (00/3/22)

 カディーというのは、インド製の手紡ぎ手織り生地のこと。
 ほら、よく映画の中でガンディーが綿糸を紡いでいたりするよね。あれで織り上げたのが、綿カディー。

 昨夏その生地を使って越中を作ったんだけど、絹製に比べてあまり快適ではなかったので、そのまま放っておいた。
 ところが、冬場になると、やっぱり綿がいい。
 それで現在、常用している。

 右写真は生地を拡大したところ。
 ご覧の通り、手紡ぎ手織り特有の不均一性がある。
 このファジー感が、柔らかでナチュラルな肌触りをもたらすわけだ。
 ただ、手紡ぎ糸はおそらくヨコ糸のみで、タテは手紡ぎに近い機械紡糸だろうと思う。
 さすがのインドでも、現在では、タテヨコとも手紡ぎの綿カディーってのは、なかなか見つからないのだ。

 ともあれ、まがりなりにも手紡ぎ手織りの綿生地による越中というのは、現在ではかなり珍しいのではないかと思われる。
 もちろん、つけ心地も上々。


その1 タッサーシルクの越中 (99/11/13)

 絹が下着素材として好適であることは、つとに知られている。
 すなわち、吸湿・放湿性に優れ、抗菌性も高いからである。ひらたく言えば、濡れてもすぐに乾き、べとついたり、ムレたり、匂ったりしないのだ。
 野蚕もまた同様の性質を持っている。
 野蚕は家蚕と比べ、繊維が多孔質なので、更に素材的に優れているのではないかと推測されている。
 吸放湿性についての試験はまだされていないが、紫外線カット率については家蚕を上回るそうだ。

 そこで私はこの夏、二種類のタッサーシルク布で越中を試作し、着用している。
 どちらも手引きの生糸で手織した平織の布で、ひとつは無漂白(写真左)のもの、もうひとつは半漂白(写真右)のものだ。

 無漂白の方は、ご覧になってもわかるとおり、天然の褐色を呈している。原糸の濃淡により年輪のような模様が浮き出て、まことに美しい。
 無漂白ゆえに、セリシンがよく残っている。(セリシンというのは繊維を保護するニカワ質のタンパク質)
 またタッサーの繊維は家蚕のものと比べると数倍太い。
 こうした特性があいまって、家蚕の羽二重とはだいぶ風合いが違う。

 触ってみると、麻のようなシャリ感がある。
 絹のような滑らかさの全くない野生のシルク。
 つけ心地は爽快この上ない。

 ことにヒモを結ぶ際の感覚が絶品。
 木綿などに比べ絹のヒモはほどけにくいと言われるが、このタッサーシルクは更にその上を行く。
 軽くゆわくだけで一日中解けることがない。
 一日使うとヒモがシワで丸くなってしまうが、別にアイロンで伸ばさなくても実用に差し障りはない。

 また洗濯後の乾きの早さもピカイチ。
 羽二重のものよりも更に早い。
 旅先で洗い忘れたとしても、朝、流しでサッと洗い、二三度パタパタと風をはらませば、それで着用OKだ。
 セリシンがよく残っているので、普通のシルクより耐久性も高いと見られる。

 ただときどき、陽物の先にザラついた感覚をおぼえることがある。
 これがちょっと欠点だろう。
 どのようなTPOにおいてそのような現象が起こるのか、ただいま調査中。
 (ま、多少ラフな方が一物の鍛錬になっていいか!?)

 半漂白のものについては、無漂白に比べ、少々柔らかい感じ。
 ただ全般的な特性については、無漂白のものとあまり変わらないと見た。 


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