MUSIC REVIEW


ヨーコ&ディクシャント:エナジーセレブレーション 1998.10.8

 1998年9月にリリースされたばかりの、ヨーコとしては十年ぶりのアルバム。
 Ma Deva Yokoといえば、篠笛。しかしこの人は、そもそも音大でフルートを専攻した人なのだ。それがオショーと瞑想に出会って、東洋の音に目覚めたという次第。前作『中空の竹』(プレム・プロモーション PRP0010 \2884)は、ちょうどその頃のアルバムだった。そのせいか、篠笛一本でひたすら瞑想的な即興音楽を展開している。

 ヨーコの音楽にまつわる「静寂」ないしは「瞑想性」は、たとえばプーナのコミューンでもなかなか得難いものがある。というのもコミューンにわんさかいる西洋のミュージシャンたちは、そのほとんどがハートミュージックの領域にいるからだ。そこにヨーコの静謐な「ハラ(腹)」ミュージックが現れると、これはちょっとした衝撃になるようだ。
 そこで毎年ヨーコが渡プーしてホワイトローブで演奏したりすると、特にフルーティストなんかはそれに影響され、みんなハラっぽいミュージックを始めたりする。

 さて現在、パートナーのディクシャントとともに全国各地で演奏活動を繰り広げるヨーコ。実は今回のCD製作の動機も、コンサート会場で「今日の音楽のCDありますか?」と聞かれることが多いからだという。
 コンサートのスタイルも、十年前の『中空の竹』の頃とは、だいぶ違ってきているのだ。

 この『エナジー・セレブレーション』には五つの曲が収められている。どの曲にもディークシャントのシンセサイザーによる伴奏が入る。これがまず大きな違いだ。それから篠笛だけでなく、リコーダーやフルートも現れる。そして音楽もハラミュージックばかりでなく、アンデス風のハートミュージックや、ニューエージ風の神秘的ミュージックが登場したりする。それで前作に比べると、ぐっとバラエティーに富んだ作品に仕上がっている。
 しかしやはりヨーコの真骨頂は篠笛だ。このアルバムでも五曲中三曲が篠笛で演奏される。
 余談だけれども、フルートを使った第四曲目のニューエージ的作品を聞いていると、そもそもニューエージ音楽ってのは、「西洋楽器によって静謐を奏でようという、絶望的な試み」なのじゃないか…という気がしてくるのである。
 ともあれ、難しい理屈なしで、楽しめる一枚。これはおススメだ。

 このCD製作のため、ヨーコ&ディークシャントは「スタジオ・エンプティスカイ」というレーベルを立ち上げた。その記念すべき第一作というわけ。ミラの表紙絵、ジュンのジャケットデザインも美しい。

Deva Yoko/Deekshant 「Energy Celebration」 SES-001 \2800 注文はTEL 0565-67-2114まで


喜納昌吉&チャンプルーズ:赤犬子(あかいんこ) 1998.7.30

 
1998年7月16日リリースの、ウパニシャッド(喜納昌吉)&チャンプルーズ最新盤。
 今回の特長は何といっても、全曲を沖縄民謡で構成したという点だ。
 レトロチックな色彩のカバーデザインが印象的(写真左)。沖縄の民家を背景にして、前列中央に羽織り袴のウパニシャッドと父・喜納昌永。左右に紅型の女性陣。後列には芭蕉布の若衆姿の男性陣…。
 ウパにとっては、「祖国」沖縄をこれだけ前面に出したアルバムも初めてだろう。

 「赤犬子」というのは、琉球王朝時代に沖縄民謡の形を作ったといわれる人物。おそらくウパニシャッドにも、現代の赤犬子たらんという意気込みがあるのだろう。
 ところで、民謡といっても彼我でちょっと感覚が違っている。日本本土(ヤマト)の場合、民謡といったら、もはや過去の伝承。たいていは江戸時代の作品で、新しくてもせいぜい昭和初期どまりだろう。
 ところが沖縄の場合、今でも民謡は成長しているのだ。たとえばウパ作詞作曲の「ハイサイおじさん」や「浮気節」なんかも、立派な民謡として、沖縄民謡集の中に収録されているのである。

 だから本アルバムにも、「白雲節」や「てぃんさぐの花」といった古いものから、「県道節」や「新・時代の流れ」など新しい作品まで幅広く収録されている。
 また曲想もバラエティーに富んでいる。「花心」や「渡地情話」といったしみじみ抒情的な曲から、おなじみ「海のチンボーラー」や「谷茶前」、「ヒヤミカチ節」といった踊りだしたくなるような曲まで、全十四曲が収められている。これはおすすめCDだ! 

 今回は沖縄民謡の大御所である喜納昌永も特別参加。このお父さん、もう八〇歳になるのだが、昨日(7/29)東京六本木のクラブ「ヴェルファーレ」で行われた喜納昌吉&チャンプルーズライブにも出演。いまだ衰えを知らぬ三線早弾きの技を披露した。

 ところで、このライブはよかったよ。那覇にあるチャンプルーズの店「チャクラ」もそうだけど、彼らのライブは踊れる会場に限る。先月、新宿厚生年金会館で毎日新聞主催のチャンプルーズコンサートがあったけど、こーゆーお行儀いいコンサートホールでのライブは、はっきり言ってあんまりおもしろくない。ウパのライブは、彼らと一緒に踊るところに意義がある。
 その点ヴェルファーレは「日本一のクラブ」(最近「ディスコ」とは言わないらしい)ということで、もう踊り放題。オレなんかお立ち台ボーイになって、狂喜乱舞してきちゃったよ。
 ウパ自身も言っていたが、六本木の「ディスコ」で三味線で踊るなんてことは、史上初のことだったに違いない。いやー新鮮だったぜ! これからウパのライブは六本木に限る。

喜納昌吉&チャンプルーズ「赤犬子」 コロンビア COCA-15326 定価3150円


Devakant : Sounds From Beyond (デヴァカント:サウンド・フロム・ビヨンド) 1997.11.6

 1996年発売なので、もはや新譜とは言えないのだが、つい最近入手したので、ここでレビューをやってみようと思う。

 日本でとりわけ人気のあるアメリカ生まれのサニヤシン・ミュージシャン、デヴァカント。昨年はNHK衛星で特集が組まれたことは記憶に新しい。その五作目のCD。
 ただこのアルバムに関しては、プロデューサーのアヌパによると、日本よりも欧州での評価の方が高かったという。聴いてみて、さもありなんと思った。これは彼の中にあるヨーロッパ的なるものを前面に押し出したアルバムなのだ。

 中近東から南アジア、極東から南米まで、様々な音楽的要素を採り入れ音づくりをしているデヴァカントだが、もともとのバックグラウンドは欧州クラシック。だから言うなればこのアルバムは、このコスモポリタン的ミュージシャンが、みずからのルーツに立ち帰ってクリエートしたものなのだ。だから彼としても、より自然体でリラックスして取り組めたのではあるまいか。それで、聴く方としても肩が凝らずに楽しめる一作となっている。

 例によって才人デヴァカントは、本職のフルートやバンスリ(竹笛)を始め、キーボード、ハープ、オーボエ、パーカッション、果てはチェロやトランペットまでひとりで演奏している。そしてそれがまた上手なのだ。お気づきの通り、バンスリを除いては全て洋楽器という点が、今回の特徴的な点だ。
 そしてボーカルには、コムナーレ劇場(フィレンツェ)のメゾ・ソプラノ、ジゼーレ・アルベルトを起用している。さすが本職のオペラ歌手だけあって、サニヤシンのセミプロシンガーを使っている前作の『セイクレッドダンス』より数段キレが良くなっている。(ただ、最近とみにボーカルづいているデヴァカントではあるが、まだまだ声と言う楽器の扱いには慣れていないようだ。どうもワンパターンに陥ってしまうウラミがある)。

 ともあれ、オレのいちばん気に入っているのが、アルバム五曲目の『ツォバナコス』。リード・ボーカルは我々にも馴染みの深い、クレタ生まれのベリーダンサー、エラスミアだ。彼女の歌う素朴なギリシア語の歌に、アルベルトの艶やかな女声と、たぶんはデヴァカントであろう渋い男声がからむ。古代のアポロン賛歌とも、中世の東方教会ミサ曲とも、現代のクレタ民謡ともつかぬ不思議な魅力を湛えた作品だ。

 アイルランド音楽をベースにした第七曲『山の精霊』なども親しみ易く、全体を通して、異教的・縄文的な原初ヨーロッパの大地や陽光、風や木々を感じさせるアルバムに仕上がっている。洋楽の好きな人にはお勧めの一枚だ。

発売:ハイサイ(03-3703-8054) \3000


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